療育機関での様子 ~親子教室vol.2~
我が家の療育っ子は知的障害と場面緘黙症をもつ女の子です。
そんな娘の療育機関での様子を振り返ってみたいと思います。
今回は自治体が主催するの親子教室での様子その2です。
*親子教室での様子その1、療育機関については以下をご覧ください。
【目次】
1.おままごとスペースから一歩踏み出せ
通い始めてしばらくは、おままごとスペースが療育っ子の安全地帯。
親子教室では、その日その日でやってくるお友達の顔ぶれが違います。
みんな予定に合わせて都合のいい日を月に2回、予約するかたちで登所するからです。
先生は療育っ子の特性をよく知っているので、
あまり人がたくさんこない日を選んでくれます。
毎回顔を合わす先生ですら、近付くことを許されていない状態です。
でもさすがにおままごとスペースだけにとどまっていれば、遊びもマンネリ化して面白くありません。
おままごとスペースにあるオモチャのほとんどは、赤ちゃんでも遊べるようなものばかり。
当時年少の後半だった療育っ子には、ほかの場所にあるオモチャや遊具の方が魅力的です。
でも緊張が強すぎて、なかなか出られない。
本当は体を動かす遊びもしたいけれど、机の上で小さく遊べるものがとっつきやすい。
そこで先生からの提案。
「折り紙でこんなの作ってみる~?」
実はこれ、来る日は毎回誘ってくれていたんです。
なんどフラれようと、無視されようと、根気強く、毎回誘ってくれてました。
そしてついに、
(うん)無言の頷き!
折り紙はこっちにあるからこっちでするよ!
そう言って、療育っ子をおままごとスペースから連れ出してくれたのです。
折り紙スペースはおままごとスペースのお隣です。
この日を境に、
一旦おままごとスペースで落ち着いたら、
折り紙スペースに移って、
折り紙や粘土遊びをすることができるようになっていきました。
折り紙スペースは椅子に座って、机の上での活動です。
席順は療育っ子の指示を待ちます。
お隣は絶対お母さん。
先生はお向かいです。
先生は毎回、この決まりきった席順を療育っ子に尋ねてくれました。
「お隣はだ~れ?」
「先生はどこ?」
答えはいつも同じと分かっていながら、
このお決まりのやり取りなら、指差しで答えてくれるから。
やり取りができるということは、コミュニケーションが取れているということになります。
それまでずっと「わたし=母」を介さないと、先生とコミュニケーションが取れなかった療育っ子。
小さなコミュニケーションの芽を大事に大事に育ててくれていたんです。
折り紙の色を選ぶとき、
それも本人とわたしと先生の分を3枚とも、先生は療育っ子に選ばせます。
感想も忘れません。
「ポコたんだけ、かわいいピンク、ずる~い!」
「変えっこしてよぉ~」
*ポコたんはニックネームです
「先生のはしぶ~い色~、いやだぁ~」
とにかくこんな調子なので、
ふふっと思わず笑ってしまう療育っ子。
たかが折り紙の色選びで、
ガードの硬い子どもの懐に入れる先生は、本当にさすがだと思いました。
その後もいろんな折り紙を教えてくれて、
いつもたくさん褒めてくれました。
そしてたくさん笑わせてくれました。
気付けばわたしも、ここで楽しい時間を過ごさせてもらっていました。
2.オヤツをたべよう
オヤツ!
きらいな人はいないのではないでしょうか??
好きなオヤツ、きらいなオヤツがあったとしても、
オヤツを喜ばない人はいないのでは・・?
それは娘にとっても同じこと。
オヤツは大好きです。
オヤツに限って言えば、好き嫌いもほとんどありません。
ですが場面緘黙症をもつ娘にとって、
人前で「食べる」ということは、とても高いハードルです。
お友達の多くはオヤツを今か今かと待っていて、
「いただきます」の合図でパクパク食べて、あっという間にごちそうさま。
娘は・・・もじもじ。
(食べたいなぁ~、でも恥ずかしいな~)*心の声
そんなことをしている間に、食べ終わったお友達はみんな帰っていきます。
結局食べられず、持って帰ることに。
さようならをしてから、車に乗った途端、
「オヤツ食べる!」
車の中であっという間に完食。
きっとお腹もすいてたんだよね。
ほんとはすぐにでも食べたかったんだよね。
見ていて痛ましかったです。
それでも、これも経験のうち、
というか、経験を重ねることで、緩和することも知っています。
その後、
①車の中で食べる
↓
②みんなが帰ったら、その場で食べられる
↓
③母に食べさせてもらって、みんなと一緒に食べられる
↓
④普通に食べられる
こんな過程を経て、無事、オヤツを食べられるようになりました!
3.小集団遊びに参加せよ
親子教室での小集団遊びは、絵本の読み聞かせ、パネルシアターなど鑑賞するものから、歌に合わせてリズム遊び、体を動かすゲームやパラバルーン、シャボン玉(室内なのに)など多岐にわたります。
じっと座ってみているだけの絵本やパネルシアターなど、受け身の活動は得意です。
静かに座って見ていられます。
問題はその他の「能動的」な活動です。
周りにいるのは知らないお友達親子。
かん動症状も全開なので、とても参加はできません。
それでもその場に居ることはできます。
活動によっては、
わたしが代わりにやったり、
二人羽織状態で動いてみたり、と付き添うこちらもかなりなエネルギーを要します。
この小集団遊びは、
結局卒園するまでに、何でもできるようになったわけではありませんでした。
ただ、できる活動が増えたのは事実です。
その日の気分の良し悪しと、活動内容によって、
参加できるもの、できないものに分かれていました。
この部分は就学を迎えた今でも残っていて、
自信をもって取り組めるかどうか、
安心して取り組める環境かどうか(場所やメンバーなど)
その条件を満たすものは参加ができる。
最初はとても厳しい条件ですが、
こちらも徐々にその条件が緩和しているように思います。
場面緘黙症の症状の改善とは、
能力を発揮できる条件が、ちょっとずつ、ちょっとずつ緩まっていくようなものみたいです。
4.活動範囲を広げよう
親子教室の活動は、とても広いお部屋を使います。
娘が活動するのは、畳1枚~2枚程度。
これではもったいない!
滑り台も三輪車も、トランポリンだってあるんです。
この活動範囲の広がりは、
オヤツの食べ具合と同じような時期に、同じような広がりを見せたような記憶です。
①おままごとスペース&折り紙スペースのみ
↓
②お友達がいない所へは行けるように(手つなぎは必須)
↓
③母が手をつなげば、行きたいところへ行けるように
↓
④割と自由にどこでも行けるように
行きたいところへ行けるようにはなりましたが、
それには条件があります。
「他のお友達がそこで遊んでいないこと」
これはなかなか譲れない条件です。
自分より先に遊んでいる場合は、その子は終わるまでじ~っと待っています。
でも自分が遊んでいる時に、他のお友達が来た時。
これはもうすごいスピードで飛びのき、結果、さっさと譲ってしまいます。
でも先生という強い味方がいます。
「今ポコたんが遊んでるから、ちょっと待っててね~」
「それは今ポコたんが使ってるから、取ったらダメだよ~」
これはなかなか親からは言いにくいものです。
一緒に遊べるなら、順番ね、と言えますが、
一緒には遊べないので、終わるまで入ってこないで、
とうことになるため、事情を知らない人には言えたものではありません。
でも先生が言ってくれることで、モヤモヤしたものを抱えずに解決してくれます。
またお相手のお友達にも事情を知る先生が付いていたりするので、「お互い様」の利己性を分かりあえる環境です。
娘はここが苦手で、こんな風にしか遊べないけれど、周りのお友達にも苦手なことがある。
だから、平たく見れば「迷惑」なことだって、
大きく見れば「お互い様」。
こんな空気がちゃんとあるのが、親子教室の良い所です。
発達に不安を抱えていると、公園などで遊ぶとき、何度「すみません」と言わないといけないことか・・
それは自分の子だけ、周囲に合わせた振る舞いができないがために、肩身の狭い思いをすることも多いからです。
親が子どもと一緒にのびのびと遊べる環境、
それが親子教室のメリットの1つかもしれません。