親亡き後の親のこと 完結編
‣以前の記事「親亡き後の親のこと」の続編・完結編となります。
さて、「親亡き後の親のこと」全2回の講演会の2日目を先週受講しました。
以前の記事で、
子どもにではなく、親自身に成年後見人を見つけておく大切さをまとめました。
今回の講演会では、
なぜ親自身に成年後見人を見つけておく必要があるのか、
その成年後見人を探すときに大事なことは何か、
障害のある子どもとその親の成年後見人制度を利用した実例紹介、
そんな内容が中心でした。
今回の講演会は、内容をオープンにしてもよいとのことなので、
ちょっとご紹介します。
◎親自身に成年後見人が必要な理由
まず1番大きな理由は、
やはり親も年をとり、子どもより先に亡くなるから、です。
《親自身が困る事》
親が年をとったとき、子どもに障害がある場合、
例えば入院するとき、施設に入るときなど、
自分に代わって手続きをする、身元引受人になる、ということを
お願いできない場合が考えられます。
《障害のある子どもが困る事》
障害のある子どもに代わって、手続き関係などを親がしていたとします。
その親の判断能力が低下するなどした場合は、誰が子どもの手続きをするのか?
また、誰が子どもの成年後見人の申し立てをするのか?
実生活に困難が直結します。
親は自分の代わりに、または子どもの代わりに、
必要な事務仕事をしてくれる人=成年後見人を見つけておく、
できれば信頼のできる人を元気なうちから探しておくことが大事だということです。
より具体的には、
親が元気なうちに契約することができる、
任意後見制度*を利用して、
自分の代わりに手続きなどを引き受けてくれる後見人を見つけておくことだそうです。
*任意後見制度 ・成年後見制度のうち、後見人になる人をあらかじめ選定し、後見人契約を結ぶもの。 ・任意後見制度を結ぶためには、十分な判断能力を有している必要がある。 ・後見人契約は交渉人役場にて公正証書をもって交わす契約である。 ・任意後見人は基本的に誰でも指定はできるが、後見監督人が裁判所より選任される。 ・後見監督人とは、任意後見人の仕事を見守り監督する人で、弁護士や司法書士などが担当することが多い。
《任意後見人と法定後見人との違い》
任意後見人は先述した通りですが、
法定後見人とは、裁判所に申し立てをした後、裁判所が後見人を選定するものです。
後見人の候補者を擁立することはできますが、最終的に後見人を選定するのは裁判所になります。
また、任意後見人制度と大きく違うところは、
判断能力が衰えてから、後見人制度を利用するという点です。
◎成年後見人を選ぶ際のポイント
親自身が自分の後見人をあらかじめ選んでおくメリットは、
「信頼できる人に託す」ことができる点です。
もちろんこの成年後見人を、子どもを含めた親族に指定することもできます。
例えば親の後見人を、我が子にお願いする場合などです。
ただ、子どもに障害のある場合、
その子どもを成年後見人にすることはできませんし、
かつ後見人は親自身より長生きしてもらう必要があります。
後見人の仕事は、基本的に依頼主の死でもって完結するからです。
そこで今回の講演会では、
成年後見人を個人に指定するよりも、
信頼できる法人と任意後見契約を結ぶことを勧めていました。
法人であれば、人間の寿命とは関係がありませんし、
法的な手続きなどにも慣れているため、事務がスムーズにいくといいます。
ただ、個人を指定する場合も、法人を指定する場合も、
信頼に足る人・会社かどうか、を十分に見極める必要があります。
これこそ、親が元気なうちに、
信頼に足る法人を見つける大きな意味があります。
それは障害のある子どもに後見人が必要になったとき、
親自身がお世話になっている信頼できる法人に、
子どもの後見人もお願いできるからです。
自分が元気なうちに、後見人を請け負う法人と十分な関係づくりをしておく。
これこそが、子どもに残せる信頼できる人脈になる、というわけです。
ただし成人を迎えた子どもに後見人が必要になったとき、
子ども自身の判断能力によって、
任意後見人契約が結べるのか、
あるいは法定後見人を申し立てる必要があるのかが変わってきます。
そして仮に判断能力が不十分だとして、
法定後見制度を利用することになったとしても、
後見人の候補者として、親が利用している法人を擁立することもできます。
(最終的に誰を後見人にするかは裁判所の判断になりますが)
◎実例紹介
講演会で紹介されていたのは、
障害のある子どもで任意後見契約を結べたケースと、
障害のある子ともで法定後見人の申立てをしたケースがありました。
【実例1:任意後見契約を結んだ場合】
障害があっても、
任意後見契約を結ぶにあたっての判断能力を、
医師からの診断書をもって証明されれば、任意後見契約を結べるということでした。
このケースでは、
親自身が元気なうちに、法人と任意後見契約を結ぶ際、
同時に障害のある子どもとその法人の双方で任意後見契約を結んだそうです。
*子どもは成人を迎えている前提です。
【実例2:法定後見を申し立てした場合】
実例1と同じく親は、任意の法人と任意後見契約を結んでいました。
その際、子どもの法定後見人の申立てに関わる業務を委託するという契約も同時に結んでいたそうです。
(事務委任契約と言います)
そして親の判断能力が衰える、
あるいは子どもに後見人が必要になった段階で、
親が契約していた法人が、親に代わって子どもの法定後見人の申立てをしたそうです。
この時に擁立した法定後見人の候補者を、
同じ法人に指定しておき、無事に裁判所から候補者が法定後見人として選出されたそうです。
このように、
親と子どもが同じ後見人(法人)と関わる事で、
家族の想いを途切れることなく、障害のある子どもの見守りに活かしていけるといいます。
その後見人を担う法人も、
親が自ら選び、自分のことも任せつつ、
子どもの将来を託すための関係づくりが同時進行でできる。
これが今回の講演会の一番メインの内容でした。
以前の記事「わたしが死んだら、この子はどうなるの?」
でご紹介した鹿内先生のご講演内容とは異なる視点の内容です。
◎余談
本記事内で、「成人を迎えた子ども」という表現が出てきます。
それは子どもが未成年のうちは、
親が親権を行使して子どもの法定代理人として契約事を交わすことができるからです。
成年後見制度にも、「未成年後見制度」というものがあります。
これは未成年の子どもの任意後見契約を、
親が代理で交わす事を指しています。
今回の講演では殆ど出てきませんでしたが、
知的な障害のある子どもが任意後見契約を結ぶことができる唯一の方法です。
今回の講演では、障害のある子どもの後見人については
早めに決めた方がいいけれど、
いずれにしても「信頼できる人(法人)」で
かつ「子どもの最期まで任せられる人(法人)」を選ぶべき、という意見でした。
親亡き後に関連する講演は、これで3回受講したことになりますが、
その全てで共通して言えることは、
障害のある子どもと自分の将来のために、
必要な対策を講じておくことが大事だということです。
自分がこれがいいと思ったことを備えておくためには、
これがいいと思える情報に出会う必要があります。
同時に情報を集めるのは大変なことです。
また集めた情報の中から、自分に必要なものを整理するのも大変です。
先のことを考えると不安にもなりますが、
今できることを1つずつ、ちょっとずつでいいからやっていこう。
そう思いました^^