ことばの発達とマスク生活
マスク生活でことばの発達が危機⁈
最近NHKのテレビ番組で取り上げられた話題です。
*NHKの特集記事はこちら
子どもに関わる大人たちがマスクをしていることが当たり前になった、今。
学校でも子どもたちが当然のようにマスクをして生活をしています。
我が家でも、子どもたちが登校前に、出かける前に、ごく自然にマスクを手に取っていて、生活の一部として溶け込んでいます。
テレビで取り上げられたのは、顔の半分が隠れてしまうこのマスク生活が、子どもの言葉の発達を遅らせる原因の一つになっている、そんな話題を特集したものでした。
特集では、マスクの代わりに、表情の良く見えるフェイスシールドを用いると、子どもの反応が良くなったり、表情が明るくなったりしたことが報告されています。
本サイトでは、子どもがことばを覚える過程や、家庭でできる取り組みなどをご紹介します。
ことばを覚える過程
赤ちゃんの「人間」の認識は「顔」からはじまる
産まれてきた赤ちゃんは、生後2か月ごろから、保育者の顔や口元をよく観察していることが知られています。
産まれてきて、まず最初に認識するのが「顔」であると言われており、小さい子どもの描く人の絵には、顔から手足が生えているようなものがありますよね。
これは子どもの「人間」というものに対する認識が、顔を初めとして徐々に手足へ広がり、最終的に完成体としての「人間」と認識することができる、という過程を表しているそうです。
声を出す最初のステップ「喃語(なんご)」
生まれてすぐに、保育者からかけられる「声」。
この音の存在に気づいてから、赤ちゃん自身が意図的に発する言葉が、「あーう」「ばばば」などの喃語だと言われています。
この喃語に反応してくれる大人の存在で、「声のやり取り」をすることの面白さを知り、ことばを発するための大事なステップとして「音まね」をするようになる、と言われています。
人の動きや声を真似するように「ことば」を覚え、発するようになる
いつも傍にいてくれるお母さんを「ママ」、食べるものを「まんま」など、意味のある音として「ことば」を使い始めるようになる、これが発語の誕生です。
発語をする前に必要な「聞く力」と「見る力」
「聞く力」
ことばを音として捉える力です。
ことばの発達が気になるときは、聴力検査も考えましょう、と言われるのは、この「聞く力」が不十分な場合、ことばの発達に影響しているから、なんですね。
聴力そのものでなくても、耳垢で塞がれている、水が(羊水が)溜まっていた、鼻炎からくる中耳炎などが原因で、聞こえにくくなっていたため、発語が遅れていたというケースもあるそうです。
‣「聞く力」とマスクの関係
マスクをしているからといって、聞こえにくくなるわけではありません。
ですが、発せられる声が、くぐもって聞こえるため、正しい発音をひろうのが難しくなってしまいます。
「見る力」
先述しましたが、ことばを覚える過程の中には、相手の口の形や動きを観察する、というものがあります。
どのような口の形から、どのような音が出るのか、これをじっくりと観察することから、発音を学んでいると言われています。
生まれつき視覚に困難のある方のことばのトレーニングの中には、口の形やのどの震え方などを手で触って形を教える、というものがあるそうです。
また、子どもに言葉かけをするときには、ゆっくり、はっきり、口の形を意識して、と言われるのも、この口の形を「見る力」に働きかけることなんですね。
‣「見る力」とマスクの関係
これはもう、言うまでもなく、マスクのせいで口元が見えないことです。
また、マスクをしていると、目元しか見えないため、表情が分かりにくくなってしまいます。
そのため、怒っているのか、笑っているのか、悲しんでいるのか、という感情をひろうことが難しくなります。
感情とことばは、切っても切れない関係です。
特に小さな子どもは、自分の行動が正しいのかどうか、を大人が怒るかどうか、で判断していることが多いです。
ことばで「だめ」と言われていなくても、先生や親が怖い顔をしていると、「なんかまずいぞ」と思うなど、ことばと表情がワンセットになってコミュニケーションが成立しています。
また、学習という側面から見ても、楽しい、嬉しい、悔しいなどの感情とともに得た記憶というのは、脳に定着しやすいと言われています。
それも小さな子どもの場合、その感情を共有してくれる大人から聞いたこと、覚えたこと、というのは大きくなっても忘れない、強い記憶となります。
ここでも、感情を表す表情というものが、とても大きな意味を持つということが分かります。
マスク生活、実際の影響
こちらはNHKの取材からの抜粋になります。
ことばの発達が遅れている
実際に0歳児を預かる保育所で、発語が遅れている。
ケンカが増えている
聞き取りにくく、表情が見えにくいことから、些細な行き違いによるケンカが増えている。
ことばの発達のために自宅でできる工夫
家の外ではマスク生活が続きそうですが、
マスクが外せる自宅では、ちょっと意識して、子どものことばを育む工夫をしてみませんか。
- ゆっくり話す
- はっきり話す
- 大きな口で話す
- 身振りや手ぶりも加えて大きく表現
- スキンシップで声の「振動」も届ける
おすすめあそびの紹介
‣まねっこあそび
声を真似するあそびです。
動物の鳴き声(ワンワン!、ピヨピヨなど)や、おもしろい音(パ行やトントンなどのオノマトペ)を真似したり、されたりします。
ワンワン、を、ワンワンワン、「ワンって何回言った?」などの数の学びを取り入れることもできます。
‣抱っこでよみきかせ
絵本を読むとき、赤ちゃんなら抱っこ、小さい子なら身体が触れ合うようにくっついて読みます。
しっかりと身体が触れていることで、お互いにリラックス効果もありますし、声を出すときの振動を伝えることができます。
いつも以上に感情をこめて、高い声や低い声を使い分けて読むことで、声に表情を付けてあげることもできます。
‣口文字当てあそび
音を出さず、口の形を見て、何と言ったか当てるゲームです。
音が二つくらいの簡単な単語(もも、など)や母音で構成される単語(あお、など)から始めるといいです。
‣ベロあそび
口の上下、左右、斜め、というように、場所を決めて舌を出します。
子どもにそれを真似してもらいます。
向かい合わせでするので、鏡になるイメージです。
親が舌を口の真上に出したら、子どもも同じように口の真上に出します。
慣れてきたら、
舌を右→左、のように2か所動かし、子どもはその動きを覚えて再現します。
2か所、3か所の動きを覚えることは、ワーキングメモリ*を鍛えるというメリットもあります。
ワーキングメモリを鍛えつつ、発語力も鍛えられる、一石二鳥のあそびです。
*ワーキングメモリとは(ウィキペディアより引用)
“認知心理学において、情報を一時的に保ちながら操作するための構造や過程を指す構成概念”です。
日常の行動の中で、目的のことを実行するために、必要な持ち物、経由地、目的地、タスクなどを一定期間覚えておくための短期的な記憶です。
‣お風呂でストローあそび
ストロー1本で色々なあそびができるのは、お風呂が一番おすすめです。
マスク生活の影響とは直接関係のないように思われますが、ストローを使ったあそびはいろんな「音」を出すための息の強さを加減したり、口の周りの筋肉を動かすことで、ことばの発達を促すと言われています。
- 湯舟のお湯を力いっぱい吹く
- 湯舟のお湯をできるだけ細く長く吐く
- 湯舟の縁の水滴をストローで吹いて飛ばす
- 事情が許せばシャボン玉を吹く
- せっけんとお湯を入れた容器の中でブクブク(泡が湧きでます)
などなど、アイデア次第であそびが広がります。
まとめ
最近では毎日のように、コロナの感染者数が最多を記録するなど、まだまだマスクと付き合っていく必要があります。
コロナの影響は切に様々なものに及んでいて、まさか子どもの発達にまで影響しているなんて、わたし自身思いもしませんでした。
こんな異例の時期に、娘もまだ、ことばの発達途中にいます。
学校の先生がずっとマスクをしている環境下にいます。
ただでさえ息苦しく感じてしまうマスクを、唯一堂々と外せる家庭でできること、これを改めて考える機会となりました。
そして、
新型コロナ肺炎が一日も早く収束することを、
マスクや厳重な消毒が要らなくなる日を、
入院中のお見舞いに堂々と行ける日を、
存分に帰省を楽しめる日を、
心より望み、願っています。